NMNまとめコラム

「健康な状態をできる限り保ちたい」という願い。

これはどんなに時代が進み、どんなに環境が変化したとしても揺るぎない普遍的な願望であり、人類は古くから健康を追い求め続けてきたと言えるのではないでしょうか。

様々な学問分野においても健康に関する研究が行われてきました。
特に近年、健康維持の観点で遺伝子に関わる研究が大きく注目を集めるようになった背景には、複雑な生命現象を対象とした研究の飛躍的な進歩があります。

生物学においては「人間をはじめとする生物の体では、年を重ねていく過程でどのような変化が起こるのか」「それは色々な生物種間でどれほど異なるのか」といったように、多種多様な生物の現象的な側面を詳しく調査されてきました。
研究が進むにつれ豊富な知識が蓄積されてきたと言えるでしょう。
そして「研究者の数ほど仮説がある」と語られるほど多くの仮説も提唱されてきました。

そんな中で吹き込まれた新たな風こそが、分子遺伝学という分野でした。
分子遺伝学は遺伝学の一分野であり、遺伝に関する現象を分子レベルで解明する学問です。
研究者たちは分子レベルという極小の視点から生物を研究することで、生命における非常に複雑な現象を理解しようとしたのです。

1つの起点となったのは1988年のアメリカのコロラド大学のジョンソン博士らの研究です。
多細胞生物ではそれまで発見されていなかった性質を持つ線虫の突然変異体(遺伝子が変異した個体)が発見されました。
1993年にはカリフォルニア大学サンフランシスコ校のシンシア・ケニヨン博士らにより、さらに別の線虫の変異体が見つかったのです。
遺伝子の変異がどのような影響を与えるか研究していく上で、これは革新的な発見だと言えるでしょう。

サーチュイン(Sirtuin)という存在が科学分野で大きく注目を集めたのは2000年頃、最初に解明されたのは酵母でした。

マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士と今井眞一郎博士らの研究対象として酵母が選ばれた理由は、単細胞のため調べなければならない遺伝子が少なくて済む上、単細胞にも関わらず時間経過で性質が変化しやすいことにあります。

性質という面に着目すると、この実験に使われた酵母というのは単細胞生物の中では特殊だと言えます。
単細胞であるにも関わらず、不等分裂(細胞分裂の一種で、均等ではなく偏った形で分かれる分裂のこと)という特殊な増え方をするのです。
通常の単細胞生物ならば分裂した細胞間に大きな違いはありません(等分裂)。
ですが不等分裂する酵母の場合、等分裂の場合に比べて分裂による劣化が起きやすく、一定回数の分裂を繰り返した段階で機能を失っていくことになります。

ガレンテ博士らの研究においては、実験を通してサーチュインを多く作る性質を持つ酵母とそうでない酵母との比較を行うことで、この酵母におけるサーチュイン遺伝子の働きを確かめることに成功しました。

また、この研究に大きく貢献した日本人研究者である今井眞一郎博士は、この発表後に独立。
マサチューセッツ工科大学と同じアメリカ内のワシントン大学へと移り、サーチュイン研究の第一人者の1人としても広く知られる存在となりました。

そしてNAD(Nicotinamide adenine dinucleotide/ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)およびNMN(Nicotinamide mononucleotide/ニコチンアミドモノヌクレチド)もまた、今井眞一郎博士らにより研究が進んでいる物質です。

日本で広くNMNが知られるようになったのも、2015年にテレビ番組で同博士らの研究が紹介されたことがきっかけだと言えるでしょう。
NMNにまつわる研究もまた、この数十年で大きな進歩を遂げているのです。

サーチュインの働きとは

サーチュインの性質を説明する場合、オーケストラの指揮者に例えられることがあります。
オーケストラ演奏において、指揮者は何らかの楽器を演奏し、実際に音を出しているわけではありません。
指揮棒を振り楽器演奏者達へ指揮する事で演奏をまとめ上げ、美しい演奏を奏でています。

サーチュインも同様です。
自身が様々な働きをするわけではなく、その働きにより多様な連鎖反応を生む可能性がある物質だと言えます。

ここで1935年に発表された、栄養学に関する1つの論文に着目してみましょう。
こちらはアメリカのコーネル大学のクライブ・マッケイ博士らによる、ラットの寿命と摂取する栄養との関連性についての研究結果をまとめたものです。
この研究は適量のカロリーのみを摂取するよう制限を行ったラットと、カロリー制限を行わなかったラットとの生存結果を比べる形で行われました。

彼らの研究結果は、それまでの栄養学における定説とは少々異なる内容だったこともあり、当時はそこまで話題になったわけではありません。
ですがその後、ラットのみならず他の生物においても類似の研究が行われました。

例えば1987年からはアメリカの国立加齢研究所にて、1989年からは同じくアメリカのウィスコンシン大学で、対象をアカゲザルとした数十年に渡るカロリー制限に関する研究が行われました。

この2つの研究は一見相反するとも思える結果が観察されました。ですが後に行われた再解析では、この結果の違いはそれぞれ対象とするアカゲザルの年齢に差があったことにより発生したものであり、結果としては「カロリー制限は健康に影響を与える」という方向性で結論が一致したと発表されました。

なお、上記で紹介したケースはあくまで動物実験の段階であり、人間にそのまま当てはめるには色々な面で研究が必要な状態です。
専門家も「安易なカロリー制限は控えるべき」と警告しています。
特に極端な制限、或いは偏った栄養摂取になるような制限はかえって良くありません。
海外では、無理なカロリー制限を続けた結果、深刻な骨粗鬆症になったというケースも報告されています。

また、カロリーは減らせばよいというものではありません。
一般には極端な糖質制限による弊害も知られています。
もちろん食べ過ぎが好ましくないのは言うまでもありませんが、あくまで適量のカロリーと必要な栄養素を摂取する形がベストです。
私たちがカロリー制限を行う場合、専門家の指導のもとでの実現が望ましいでしょう。

このようにカロリー制限と健康との関係性自体こそ観測されたものの、双方の間で具体的にどういう仕組みでこの状況が発生しているのかは長年解明されていませんでした。

実はこの現象に影響していたものこそがサーチュインなのです。

2004年、アメリカのハーバード大学のデビッド・シンクレア博士らの研究では、カロリー制限を行わなかったラットと制限を行ったラットにおいて、サーチュインタンパク質の量が調査されました。
その結果、カロリー制限した方のラットは、カロリー制限をしなかったラットに対し、腎臓や脳などにおいてサーチュインが増えていたのです。
サーチュイン遺伝子というのは、飢餓対策として進化した遺伝子とも考えられています。
よって働かせるには飢餓状態にする、というのは極めて単純な理屈なのかもしれません。

2011年には金沢医科大学の古家大祐博士らにより、人間におけるサーチュインの影響も立証されました。
この研究では7週間に渡り30代~60代の男性4名へカロリー制限を行っています。
期間中は1日の必要エネルギー量より25%のカロリー制限を行った食生活を続け状況を調査したところ、サーチュイン遺伝子が作るサーチュイン酵素の量が増加しました。
この実験の模様はTV番組でも紹介され、話題を集めました。

古家博士らによれば、1日の中でもサーチュイン遺伝子の活性化状況は変動しており、活性化しやすい時期とそうでない時期があると考えられているとのことです。
人間の体内では、食物を摂取するとインスリンが分泌されます。
インスリンは血糖の上昇を抑えるだけでなく、サーチュイン遺伝子やオートファジーのメカニズムも抑制します。
そのため単なるカロリー制限を行うだけでなく、「何を食べるか」「どのタイミングで食べるか」なども重要になってくるでしょう。

サーチュインの活性化が関係してくるのは、カロリー制限だけではありません。
適切な食事に合わせ適切な運動を行うことがサーチュイン活性化に影響を与えることが分かっています。
具体的にどのように食事制限や運動を行うのがベストかは、今後の解明が待たれるところです。

そして研究の結果から数週間のカロリー制限でもサーチュイン遺伝子が活性化する可能性というのが分かってきたということは、その逆もまた然りと言えるのではないでしょうか。
せっかくサーチュイン遺伝子が活性化したとしても、カロリー制限を止めるとすぐに活性化が止まってしまうという可能性も拭い去れないでしょう。

もしそうであれば活性化効果を継続させるには延々とカロリー制限を続けなければならないということになります。
よってカロリー制限に頼らない活性化の方策を探る動きへとフェーズが移りつつあるとの見方もできるでしょう。

NADが生成される過程について

NADは様々な生物の体内にて元々自然に生成されている物質です。
ただしNAD自体は直接的な摂取や吸収が難しい物質であるため、体内で自然に合成させければなりません。
人間をはじめとする哺乳類の体内でNADを生成する経路としては、サルベージ経路(再利用経路)とデノボ経路(新生経路)との2つがあります。

デノボ(de novo)はラテン語で「再び」「新着」「新たに」などの意味を持つ言葉です。
デノボ経路は、原料となるアミノ酸などの物質から、新たな別の物質を生合成する経路のことを指しています。
NAD生成においてはトリプトファンが出発物質となり、キノリン酸を経る形で行われます。

サルベージ(salvage)は英語で「引き上げる」「回収する」などの意味を持つ言葉です。
サルベージ経路は、元々体内に存在する物質もしくは摂取し取り込んだ物質を分解し、分解によって生じた物質を材料とし再利用する形で合成を行う経路のことを指しています。
NAD生成においては、細胞内と細胞外という2つの経路が存在し、細胞内経路では合成の過程でNMNも生成・利用される形となります。

体内で生成されるNADの量の調整は、細胞における合成や分解によって行われていますが、私たちが年を重ねることで減っていきます。

例えば、Nampt(nicotinamide phosphoribosyltransferase/ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素の場合。
体内においては脂肪組織の働きにより、血液中にという分泌されるNamptはNADの生合成に関与する生理活性物質で、プレB細胞コロニー増強因子/PBEF/Visfatinなどの別名も持っています。

脂肪および脂肪から分泌されるNamptは加齢により減少傾向にあります。
NamptはNMNを生成する酵素であるため、これが減少した場合、生成されるNMN、さらにはNMNを元に合成されるNADの合成能力も減少します。

今井眞一郎博士によると、2017年時点で「加齢により減少するNamptの量を人工的に増加させた場合、どのような影響があるか」という点については現在研究が進められているテーマの1つであるとのことです。

合わせてNAD合成における前駆体となるNMNを人工的に摂取・吸収させた場合の影響についても研究が進められています。

今井博士の研究室では、それまでの関連研究をふまえ、1年間マウスにNMNを投与しその影響を調査するという実験が行われました。同博士によれば、この実験で得られた研究結果は今後を考える上で非常に重要なものであったとのことです。

また2019年には、今井眞一郎博士と、慶應義塾大学の伊藤裕博士、坪田一男博士、安井正人博士、岡野栄之博士らの研究グループにより、ヒトを対象にした研究の結果が発表されています。

こちらは2016年から40歳~60歳の健康な男性10名を対象に、NMNを投与する形で行われました。
その際、それぞれ同じ方が異なる量(100mg、250mg、500mg)のNMNを経口で各1回ずつ摂取し、摂取後の身体の変化を調査。
なお摂取後の調査としては、血圧や脈拍、睡眠状況、視力をはじめとする目の機能を調べたほか、腎臓や肝臓などの機能を知る事ができる血液検査や尿検査が行われたとのことです。

結果、全ての用量においてNMN摂取後の身体状況の変化は基準値に収まっていました。
これにより、ヒトへNMNを安全に投与可能であるということが初めて立証されました。

それまでのNMNに関する実験は基本、動物に対する影響を調べる内容でした。そのためヒトへの影響を調査するという形で行われ、安全性を立証したこちらの研究の意義は大きいと言えます。
ヒトがNMNを安全に摂取できることが判明したことで臨床研究を進めやすくなることもあり、今後のNMNの研究はさらに進めやすくなることでしょう。

また同研究グループでは、こちらの研究の成果をふまえ、NMNの長期間投与研究が予定されています。
この長期間投与研究では、NMNをヒトに長期間投与した場合にどのような影響があるか、NADは体内でどのように働くかを解明することを目的に行われるとのことです。

NMNの摂取方法について

ではNMNは、どのように摂取すればよいのでしょうか。

自然由来の物質であるNMNは、ブロッコリー・トマト・アボカド・枝豆・きゅうり・キャベツといった野菜やフルーツ、母乳などにも含まれています。
ですが食品中のNMNは非常に微量であるため、通常の食事のみで必要量を摂取するのは難しいのです。
そのため食事以外の手段によりNMNを摂取する必要があると言えるでしょう。

現在NMNを摂取するには、サプリメントを利用するのが主流です。
サプリメントのメリットは、各自の状況によって補いたい栄養素を選べること、手軽に必要量を摂取しやすいことなどにあります。

最近ではNMN配合の化粧品にも注目があつまっているので、毎日のスキンケアへの活用を考えてみるのも良いかもしれません。

合わせて、普段の生活を見直すことでNMNの活性化を図るのもよいでしょう。
今井眞一郎博士によると、生活リズムをサーカディアンリズムに合わせること、日常的に適度な運動を行うことが望ましく、博士自身も実践を行っているとのこと。

生活習慣病予防を目的に厚生労働省が健康情報を提供しているサイト「e-ヘルスネット」によれば、サーカディアンリズム(概日リズム)は体内時計により形成されている約24時間周期のリズムです。

体内時計は地球の自転に伴う昼夜の24時間周期の変化に合わせるべく、およそ1日周期で体内環境を変化させる機構です。
これまでの研究により温度や光の変化の影響を無くした状態であってもこの変化が確認されていることから、人間をはじめとする生物には生まれつき体内時計が備わっていると判明しています。

日頃から適度な運動・バランスの良い食事を心掛け、規則正しい生活を送ることで、体内時計が整います。
特に朝は重要です。
毎朝決まった時間に適度な糖分を補給すること、朝の光を浴びることで生活のリズムを調整しやすくなるでしょう。

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